ブロードバンドの本命、光インターネット

レポート:小池良次

 前回は、たとえxDSLやケーブルモデムが普及しても、いまのインターネットではビデオ・オン・ディマンドやテレビ電話といった本格的なブロードバンドサービスを提供できないと解説をした。そこで今回は本格的なブロードバンド基盤と期待されているインターネットの光化技術を紹介してみよう。

◆幹線網の光信号化


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 90年代後半、インターネット業界で騒がれたラスト・マイルはxDSLやケーブル・モデム、IMT2000などにより「技術的な壁」は克服され、普及方法や商業化といった運営・政策的な問題となっている。では、インターネットがいま直面している技術の壁とは何だろうか。それは「幹線網の爆発」 という問題だ。その解決策として進められているのがインターネットの光通信化(光化)といえる。光化は大きく「脱-光電光変換」、「網の知性化」、「光機器・部品開発」にわかれる。今回は脱-光電光変換と知性化について触れてみたい。

 xDSLなど末端の高速化に伴いインターネット幹線網は現在の数千倍を超えるスピードが必要となってくる。全米幹線網などは既に光ファイバーを利用しているが、90年代には光をそのまま交換制御する技術がなかったため、ファイバー網とファイバー網をつなぐ接続点では光から電気信号に変えて経路をかえていた。これを光と電気の頭文字を取って光電光変換と呼ぶ。ペタビット・レベルの超高速幹線網を構築するためには、この光電光変換がボトルネックとなる。

◆長距離の幹線網は脱-光電光も終盤

 米国のインターネットは距離が長い順に全米幹線網、地域幹線網、市街地幹線網、アクセス網となっている。そして光化は全米幹線網からアクセス網に向かって進んでいる。もっとも長い距離を結ぶ全米幹線網は、ここ数年でネットワークの形状をリングからメッシュに変更すると同時に、光のまま信号の入出力を行う光ADMや光相互接続装置(オプティカル・クロスコネクト)、小規模光交換機などを導入して脱-光電光を終えようとしている。

 つづいて地域幹線網も同様の手法で脱-光電光が進んでいる。

◆一番激しい開発競争は市街地幹線網

 一方、市街地幹線網では激しい光開発競争が展開されている。この部分はCiena社やCisco社など長距離幹線網を得意としてきたメーカーと、Alcatel社やAlidian社などここを軸に製品開発を進めてきたメーカーがひしめいている。

 多数の機器メーカーが狙っているメトロコア市場は光化の手法でも議論百出の状況だ。ちょっと前までは市街地幹線網もメッシュ形状が提唱されたが、いまはリング構造を残したままの脱-光電光変換を模索している。この背景にはサービスを急ぐ通信事業者の事情がある。多くの幹線事業者は地域網の建設を終え、現在は目抜き通りの地下に光ファイバーを張る市街地幹線網、そこから主要な商業ビルに支線を張り巡らすアクセス網へと建設を続けている。この部分で大量の追加工事をともなうメッシュ形状への変換は、サービス提供時期の遅れや投資額の増加やコスト競争力の低下を生むためだ。

◆混沌としているメトロエッジ

 市街地幹線網とアクセス網が接する部分をメトロエッジと呼ぶ。このメトロエッジにおける光化はこれから徐々に商業化を迎える。

 メトロエッジ部分は、これまでのように脱-光電光で高速化すると言うわけには行かなくなる。ISPが個人や企業にサービスを提供するアクセス網では、IPやATM、FR(フレームリレー)、TDM(音声)など多様な通信手順が飛び交う世界で、速度よりも柔軟性が重視される。Alcatel社やAlidian社、Astral Point社など多くの会社が、この分野の開発を進めている。

 インターネットの光化を「幹線網の爆発を避ける」という意味で捉えるなら、このメトロエッジまでの高速化と見るのが適切だろう。

◆ネットワークの知性化


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 光化によるブロードバンド基盤の整備は単に高速化だけを狙っているわけではない。もっと賢いネットワークにする動きもある。たとえば、現在、専用線(T1)やフレームリレーなどは使わなくても固定費を支払っている。将来は、ネットワークが知性化すれば使った量だけ料金を支払ったり、上限を決めずに必要な速度だけ必要なときに利用することも可能になる。

 これは、より高度な運営管理システムの開発が必要で、それは通信専用の半導体や集積素子、俗称「ハイパフォーマンス・ネットワーク・プロセッサー」分野と、課金や監視などを行う「運営管理ソフト群」から構成される。両分野とも現在、華やかな開発競争が進んでいる。

 運営管理システムの課題としては
1) 需要への機動的な対応
2) 運用システム簡易化(顧客への開放)
3) SLAの確立
4) ネットワーク拡張性の確保
5) マルチベンダー環境の実現
6) 各種規格の標準化
ような項目があげられる。

◆日米における光化のうごき

 さて、光化の動きに対する業界全体としての取り組みを見ると日本とアメリカでは大きな違いがでている。これは日本と米国のネットワーク構造の違いが影響している。

 一般にISPと幹線網の接続には公共相互接続点(IX)、プライベート・ピアリング(個別相互接続)、トランジット・サービス の3種類がある。広い国土と多数のプロバイダーを持つ米国では、UUNetなど大手幹線事業者が提供するトランジット・サービスを利用するISPが多く、大きな影響力を持つ。そのため通信事業者、機器メーカー、研究機関、政府機関(全米科学財団など)が広く参画して、インターネットにおける光技術の開発とその運用面での議論が進んでいる。

 一方、日本のインターネット幹線網では国土が狭く、都市部に主要プロバイダーが集中していることもあり公共相互接続点(IX)の比重が高い。逆にトランジット・サービスや個別相互接続は米国に比べ影響力が少ない。そこで日本ではIXの能力増強(高速化、階層化)という点で、より多くのプロジェクトが動いている。

 今後、この日米差がどのような展開を見せるかは、目の離せない重要なポイントといえるだろう。

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 ほんの2年ほど前まで光化ではオールオプティカルという言葉を語る人が多かった。これは、コンピュータに光ファイバーが直接つながる世界、つまりインターネットすべてを光通信にしようという夢だ。その延長線上にはユーザー毎に各レーザー光線の波長を割り当てるラムダ通信の概念も登場した。

 しかしメトロコアやメトロエッジの光化を進めている現時点で、オールオプティカルはサイエンス・フィクションの世界に等しい。


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