レポート:小池良次
前回は、26兆円を超える巨大な家庭市場を狙って、パソコン業界とケーブル・テレビ業界がホームネットワーク市場に参入している状況を述べた。また、ホームネットワークの基本構成がレジデンシャルゲートウェイと屋内ネットワークであり、コンテンツとしては、双方向ビデオ番組が最有力であることも考察した。今回はもう一方の柱、屋内ネットワークの実現性について考えて行きたい。
家庭内にネットワークを持ち込む場合、電話線、無線、イーサネットなど、どの通信規格をバックボーンに用いるかは難しい判断と言えるだろう。まずは、現在利用可能な技術について見てみよう。
家庭内にネットワークを構築する場合、工事を必要としないことが好ましい。そこで既に屋内に配線がある電話線、電力線を使うか、無線で構築するといった方法が主流となる。
まず既存配線を利用する方法としては、電話線を使うHomePNA規格、電源コンセンを使うHomePlug規格がある。特に、HomePNAは約8割と、家庭内ネットワークでもっとも利用されてきた。これまで各社各様の規格で走っていたが、最近は32Mbpsまで出るHomePNA規格へと各社足並みがそろえており、将来的に100Mbpsまで拡張される予定だ。
一方、電源コンセントを使うHomePlugは、2000年5月に標準規格バージョン1.0を出してイーサネットクラスの10Mbpsを確保したが、その詳細仕様が決まったのは今年初めであり、やや出遅れ状態にある。現在は、相互接続の確認作業が続いているとともに、20、40、80Mbpsの規格設定も進んでいる。ただ、様々な家電機器が接続されている関係から電力線は非常にノイズが多く「冷蔵庫が動き出したとたんに回線スピードが落ちてしまう」などの事例が報告されている。今後は、ノイズをどう排除するかが普及の鍵を握るだろう。
2000年春に市場に出回り始めた無線ネットワーク(HomeRF規格)機器が急速に伸びている。規格団体HomeRFによれば2000年10月時点で家庭向けネットワークの40%以上をHomeRF機器が占め、2001年第1四半期には全米ホームネットワークの6割に達して、電話線を追い抜いてトップに立った。
一方、同じ無線でもBluetooth規格は出遅れている。接続範囲が10m以内、スピードが1Mbps以下という同規格だが、急速に機器の価格が低下していることや高いモビリティを持つ点から卓上や近距離でのネットワークに活用されることになりそうだ。
このように様々な技術が家庭向けネットワークとして開発されているが、そのスピードは現状で1〜32Mbps程度に留まっている。
数台のコンピュータや周辺機器を接続するだけであればこの程度で十分機能する。しかし、前回説明したレジデンシャル・ゲートウェイを軸とする本格的なホームネットワークを想定したとき、これらの技術に頼ることができるだろうか。
この点を明確にするためには、実際のどの程度の情報量が家庭内で飛び交っているかを把握する必要がある。
そこでIEN(Integrated Entertainment Networks)社のマーク・ブリッジウォータ副社長が分析したデータを紹介してみたい。同氏は家庭内をホームシアター、オフィス(1)、ビデオ・ゾーン(2)、オーディオ・ゾーン(4)に分けて、それぞれの情報量を積算している。(図を参照)同氏の計算によれば、家庭内で必要な情報帯域は66Mbpsから300Mbpsと予想以上に大きい。
つまり家庭内は広帯域バックボーンが必要で、現在の数十Mbps程度のネットワーク規格では、とてもこれだけの情報量をさばくことはできない。もちろん無線LAN(802.11)や電話線(HomePNA)、電力線(HomePlug)など、様々な規格がより高速化を狙っているが300Mbpsまでは保証できていない。唯一、現状で可能性をもっているのはIEEE1394規格だろう。
IEEE1394規格は、ホームネットワークのバックボーンに必要な優れた特徴を持つ。まず、最大400Mbpsという高速性だ。これだけの速度があれば、家庭内のバックボーンとして十分機能する。また、リアルタイム配信で重要となるチェクサム機能(↓)も持っており、通信の信頼性も高い。しかも高速シリアル・インターフェースであるため接続が簡単で、機器の順番などに左右されず、CAT5(↓)や光ファイバーで機能が実証されていることも強みとしてあげられるだろう。
実際、ソニーやフィリップス、三菱電気など大手家電メーカーが製品に実装しており、ビデオレコーダーやコンピュータなど数百万台が市場に出荷されている。デジタル・ハーモニー社の予測によれば2004年にはゲーム機器も含め出荷台数7880万台に達する。
こうした優れた特徴を持つため1394規格はセット・トップ・ボックスやデジタル・テレビにも採用されている。また自動車向けネットワークでも有望で、そのほかスマートホームフォーラム(www.smarthomeforum.com)のHAViなどにも含まれている。
このようにIEEE1394は、ホームネットワークを支えるバックボーンとして、もっとも有望であることは間違いない。しかし、IEEE1394を採用するとすれば、家庭内にCAT5や光ファイバーの配線工事が必要となる。また、部屋の中にIEEE1394の配線を引き回すのはあまりに煩雑といえる。バックボーンにIEEE1394を採用し、部屋の中ではBluetoothや無線LAN(802.11)あたりを活用するほうが適切と言えるだろう。
通信手順はIEEE1394を利用するとして、テレビやステレオ、照明器具や空調装置など様々な家電製品をどのように制御をするかは、別の問題となる。この制御規格に関しては、様々なアプローチが並行して進んでいる。
BACnetやEIB、HomeAPI、LonMarkなどホームオートメーションの影響を色濃く残すグループとHAViやUniversal PnPといったAV機器を中心とする新しい団体に大別される。また、上位アプローチ(通信とアプリケーションの統合制御)を狙う欧州勢のCOMMENDやオープン規格を推進するOSGiなどの試みも注目したい。
いずれにせよ双方向ビデオ番組やホームウェブサーバー、ネットワークゲームなど家庭の情報アプリケーションが発展途上にあるため、制御規格は仕様拡大に追われており、混沌とした状態が続いている。
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2回に渡って、ホームネットワークの将来について考えてみた。各社の熱心な動きを見ると、ホームネットワーク元年はそう遠い未来でもなさそうだ。